読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ライブの感想とか

感想とか考察とか

演劇女子部「気絶するほど愛してる!」DVD感想

演劇女子部 気絶するほど愛してる!のDVDが届きました。

今はもうカントリー・ガールズの一員ではなくなってしまいましたが、主人公の寛子役・稲場愛香さんが本当に素晴らしい演技を見せてくれた、そして最後の舞台となった作品です。

本来ならば東京公演の後、少し日を開けて大阪公演が始まるはずでした。

しかし、稲場さんの体調不良による突然の卒業で幻となってしまった。

運良く東京公演を観に行けた私は本当に貴重な経験をしました。

今回、生で観た記憶とDVDでもう一度しっかりと考えながら観たことをまとめて感想を残したいと思います。

※ストーリーの内容についての考察、感想になります。

当然ながらネタバレが存在しますのでお気をつけください。というかほぼネタバレです。

● ● ● ● ●

稲場愛香さん演じる主人公の寛子は、亡くなった妹が大ファンだったというビリー星野を探して田舎から単身上京してきた女の子。

幼いころに両親を亡くし、しずちゃんというたった1人の妹すらも天に奪われた寛子は、せめて妹の大好きだった歌手に一目合わせてあげようと、生前の写真を手にジャズ喫茶へとたどり着く。

そしてそこで目にした光景が寛子の世界を一変させた。

親衛隊。ロカビリー三人男。ビリー星野とガラパゴスキング。そして、死んだ妹そっくりなビリーのファン、幸子。

大好きだった妹に、ビリーのファンであることも身体が弱いこともそっくりな幸子。寛子は幸子のことが他人とは思えなくなっていく。

病弱なため親にジャズ喫茶通いを止められている幸子は、一人っ子ということもあり、身体を気遣い家まで送ってくれた寛子を優しい姉のように思い始めていた。

あらすじはだいたいこんな感じです。

幸子はただただビリー星野のことが大好きな女の子なのです。純粋なんです。だから親衛隊にも入っていて、鉄の掟と呼ばれる親衛隊のルールも守り通している。寛子のことも、ビリーの魅力をわかってくれて嬉しいし一緒に応援頑張ろう、という気持ちで接しているのだと思います。同担歓迎派。

それにしても寛子、最初はビリー星野の顔すら知らなかったというのにステージに出てきたビリーと目が合っただけで一瞬で堕ちたのである。

そう。私達ファンって、だいたいそういうきっかけなんですよね。

なんとなく見た初めてのステージで心を撃ち抜かれたり、ただその目線一つに一喜一憂できる。

いきなり「ファンあるある」で始まるスターとファンの出会いがリアルでした。

寛子「ビリーさんは私だけを見て微笑んでくれた!」

このセリフで観客席から笑いが起きるんですよ。見に来ているのは9割以上がハロプロのファンなわけで、いわゆる「オタクがよく言うやつ」を思い起こして笑っちゃってるんですよね。「今完全に俺のこと見て笑ってた!」って。いるいるそういうオタク、みたいな。

この舞台、こういう「オタクならわかる心理」が随所に散りばめられていて、それが滑稽だったり健気だったり、ときには打算的だったり、泣ける程に純粋だったりするんです。

少し本編の内容が前後するんですが、ビリー星野の親衛隊三人組は前半では偉そうに他の客を退かしてまで近くで見ていたのに、ロカビリーブームが下火になると一度GS(グループサウンズ)に浮気をするんです。

あれだけ鉄の掟だの浮気はダメだの言っていたのに、ファンって薄情なものですよね……。でもそんな姿すら、アイドル現場ではよく見る光景だなと思います。

話を戻して、ビリー星野。

彼は実はとんでもなく嫌な男だった。わがままな性格で遅刻をしても悪びれもせず、バンドメンバーのジェリーと喧嘩してしまう。そしてその喧嘩がきっかけでジェリーは脱退。急遽穴埋めの"立ちんぼ"として選ばれたのが、たまたまアルバイト中に立聞きしてしまった寛子だった。

もちろん、ファンがビリーと接近することは親衛隊の掟で固く禁じられていましたが、寛子は「大好きなビリーの近くにいられる!」という甘い誘惑に勝てません。

友達には申し訳なさでいっぱいだけれど、大好きなスターと一緒のステージに立てる喜びは寛子にとって幸せでしかなかったのでしょう。今までの変わり映えのなくつまらない世界を一気に色付けてくれたビリー星野と一緒に居られる。 いわゆる「繋がった」ファンってそういう心情なんですかね?

いや、もちろん私には想像することしか出来ませんが、寛子の場合は自分が立ちんぼとしてでもメンバーでいなければビリーのウエスタンカーニバル出演の夢が潰えてしまう、という使命感(?)、ビリーを困らせたくないという純粋なファン心理も働いていたのだと思います。

ファンとしてのルールや良心と、「好き」という純粋な気持ちの板挟みにあった寛子は結局、どんなにわがままで子供っぽくて最低な男だとわかっていても、ステージに立つビリーを見てしまうと嫌いになんてなれないんです。

だって、ステージで歌うビリー星野は寛子の世界を変えてくれた「光」そのものだから。

アイドルなどを応援してる人ならおそらく大多数の人が当てはまるだろうと思うのですが、そのアイドルなりが好きな理由として「歌が上手い」というのがあったとします。

でもそれって、技術的に言ったらもっともっと上手い人なんてごまんといるわけです。

アイドルや歌手を好きな理由として「歌が上手い」は、好きになるきっかけや、好きになった理由のごく一部でしかない。

性格、顔、話し方、色々あると思いますが結局のところ「よくわかんないけど好きで好きで仕方ない」。そんなもんなんだろうなって思います。

理由ならいくつでも述べられても、決定的なものはどれかと聞かれたらズバリ答えられる人って意外と少ないんじゃないかな。

この舞台の後半、私が一番号泣してしまったシーンがあります。

寛子が幸子に電話をかけるシーン。

幸子はビリーと寛子が抱き合っているところを目撃してしまい、その後もビリーの事を信じ続けて雨の中ずっとステージが始まるのを待っていた。肺炎を拗らせた幸子は、寛子に裏切られたショックでもう何も食べず誰とも話さず、寛子はそんな幸子への弁明が無意味だと悟るとわざと電話越しに酷い言葉を投げかける。

ジェリーの「ビリーに復讐するためだけに頑張ってきた、怒りを生きる力に変えたんだ」という言葉にかけてみたんですよね。

幸子が「生きよう」と思えるほど、自分を恨んでくれたらいい。「ビリーのことを悪く言った寛子を見返すため、ビリーの事を支えるために生きなきゃ」。そんな風に思ってでも幸子には生きていて欲しかった。幸子もビリーと同じ、寛子にとっての光だったから。ビリーに出会わせてくれた、大切な友達だから。

寛子は幸子に裏切り者と思われたまま、ビリーには本心を言わぬまま、二つの光から離れていきます。 それでもずっと、遠くから、応援している。あの日目が合った瞬間から今まで、これからもずっと、気絶するほど愛してる。

この舞台の凄いところは、物凄くリアルなんですよ。"ファン心理"が。

それは寛子だけじゃなくて、幸子や、一度他の人に浮気してしまった親衛隊のみんなも。

色々な視点からの"ファンの気持ち"というのがつまっていて、見ていて抉られるんですよ。心当たりがあるから。

そしてそんなどうしようもなく人間くさくて愛おしいファンという生き物を、アイドルが演じていることの意味。脚本家はどこまで狙ってるのかわかりませんが、普段アイドルでありファンの光である彼女らは一体どんな心境だったのか、知りたくなります。

主人公・寛子役の稲場愛香さんは本当に初舞台なのか?、前世で大女優だったときの記憶が残ってるんじゃないかってくらいの名演でした。

本当に、寛子という一人のファンの人生をあの狭い舞台上でしっかりと生きてくれました。舞台見ててあれだけ号泣しながら手拍子したのは生まれて初めての経験だった。本編が終わってすぐ、カントリー・ガールズの「ブギウギLOVE」のパフォーマンスがあったんですが、ずっと泣きながら手拍子してた。周りのオタに引かれてたんじゃないかなって思うし多分あの日私が一番号泣してた自信があるってくらいとにかく嗚咽がヤバかったです。

多分その頃、とあるグループに対して好きなのに不満があって、好きなのに活動を見るのが苦しくて二律背反、ジレンマを抱えた状況だったから余計に心に効きまくったというか。

そんな感じです。

上手くまとめようとしたのにやっぱりまとまらなかった。でも感情のままに書き殴ってみた方が熱は伝わるかなと思うので、冷静になるまではこのままにしておきます。

長々とお読みいただきありがとうございました。